2019年読んでよかった本リスト
2019年面白かった本リスト
2019年に読んで面白かった本を下記にあげています。
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1.国内小説
星海社『さよならよ、こんにちは』円居挽
光文社『宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー』宮内悠介他
早川書房『天冥の標X 青葉よ、豊かなれPart1~Part3』小川一水
文藝春秋『彼女は頭が悪いから』姫野カオルコ
KADOKAWA『五位鷺の姫君、うるはしき男どもに憂ひたまふ 平安ロマンチカ』汀こるもの
KADOKAWA『鹿の王 水底の橋』上橋菜穂子
早川書房『ヒッキーヒッキーシェイク』津原泰水
角川書店『おそろし 三島屋変調百物語事始』宮部みゆき
早川書房『なめらかな世界と、その敵』伴名練
講談社『紅蓮館の殺人』阿津川辰海
文藝春秋『Iの悲劇』米澤穂信
新潮社『白銀の墟 玄の月 第一巻~第四巻』小野不由美
KADOKAWA『まほり』高田大介
小学館『プロペラオペラ』犬村小六
早川書房『嘘と正典』小川哲
2.国内ノンフィクション・エッセイ
サイゾー『ルポ川崎』磯部涼
集英社『のっけから失礼します』三浦しをん
新潮社『ノモレ』国分拓
3.翻訳小説
早川書房『拳銃使いの娘』ジョーダン・ハーパー
東京創元社『ローズ・アンダーファイア』エリザベス・ウェイン
文藝春秋『監禁面接』ピエール・ルメートル
国書刊行会『さらば、シェヘラザード』ドナルド・E・ウェストレイク
文藝春秋『鉤』ドナルド・E・ウェストレイク
東京創元社『ロイスと歌うパン種』ロビン・スローン
岩波書店『どこまでも亀』ジョン・グリーン
東京創元社『ケイトが恐れるすべて』ピーター・スワンソン
東京創元社『メインテーマは殺人』アンソニー・ホロヴィッツ
4.翻訳ノンフィクション
亜紀書房『人喰い』カール・ホフマン
早川書房『花殺し月の殺人――インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』デイヴィッド・グラン
化学同人『大英自然史博物館 珍鳥標本盗難事件―なぜ美しい羽は狙われたのか』カーク・ウォレス・ジョンソン
亜紀書房『黄金州の殺人鬼――凶悪犯を追いつめた執念の捜査録』ミシェル・マクナマラ
以下、感想メモです。
1.国内小説
星海社『さよならよ、こんにちは』円居挽
奈良出身の著者による奈良青春小説。エモーショナルな短編集。
初出は同人誌『NR』。かなり昔に書いたものが混じっている。
なかでもドラクエの「ふっかつのじゅもん」モチーフの「DRDR」が大好き。
光文社『宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー』宮内悠介他
博奕をテーマにした書下ろしアンソロジーというあるようでなかった一冊。
法月綸太郎の短編が特別好き。
早川書房『天冥の標X 青葉よ、豊かなれPart1~Part3』小川一水
大学に入学した年に『天冥の標I メニー・メニー・シープ』を読んで以来だだはまりのシリーズが完結してしまった。
基本1話完結で巻ごとにレ・ミゼラブルだったり医療だったり宇宙海賊だったりエロだったりする……5巻までは。6巻からはすべてを巻き込んでクロニクルをやっていくので大きなものに支配される感覚を味わえる。大きなものに支配されたい人向けの本。
文藝春秋『彼女は頭が悪いから』姫野カオルコ
東大に通う男子学生が他大学の女子学生をまさにおもちゃのように扱った事件をモデルに、被害者の女性と加害者の男性の来歴をつぶさに記し事件の発生から裁判までが克明に描かれる。
行間にあふれる著者の静かな怒りを受け止めるのが大変でした。
あくまで小説。小説なので加害者の内面や被害者の内面の描写がある。
そういうのが気にくわないひとは読んでもピンとこないのかもしれない。
KADOKAWA『五位鷺の姫君、うるはしき男どもに憂ひたまふ 平安ロマンチカ』汀こるもの
好きな作家の新刊を読める幸せをかみしめよ。
平安時代を舞台に幼馴染の夫と12歳(!)で死に別れ出家した姫、が、モテる話、とみせかけてインターネットの闇みたいな平安時代の闇になぐりこみに行くような話。
続刊が同人誌。KindleUnlimitedにお金払っていると無料で無限に読める。
KADOKAWA『鹿の王 水底の橋』上橋菜穂子
鹿~。
いつの間にかシリーズ化していた。前作は医療SFファンタジーだったが今作は政争の話。
『鹿の王』はアニメ化だそうでほんとうにめでたい。
早川書房『ヒッキーヒッキーシェイク』津原泰水
書店で「変な風に話題になったけど本当は作品がすごいんです」フェアをやっているのを見かけた。
私も唯一無二の作家だと思っている。
好きな書評。
角川書店『おそろし 三島屋変調百物語事始』宮部みゆき
このシリーズを読んでなかったので今読んでいる。
時代小説の形式で、わけあって三島屋預かりになっているお嬢さんがお客さんの持ち込んでくる実話怪談を聞き取っていく連作短編集。
いくつかのつながっているとも終えなかった短編が真っ黒な糸によって関連付けられ迫ってくる後半の怖さといったらない。
文庫本刊行当時は「KADOKAWA」じゃなくて「角川書店」だったんだなあ。
早川書房『なめらかな世界と、その敵』伴名練
「ひかりより速く、ゆるやかに」は2019年ベストオブ短編!
とてつもなく遅い時の流れに新幹線ごと隔てられた修学旅行生。
嘘をついて修学旅行に参加しなかったクラスメイト。
かつて電撃文庫から出ていた『ある日、爆弾が落ちてきて』を彷彿とさせる設定からここまで深化したものがいまここで読めるのかと衝撃を受けた。
講談社『紅蓮館の殺人』阿津川辰海
からくり館に死体と名探偵と助手を入れてシェイクして山火事でちょうどよくあぶった小説。
エラリー・クイーン『シャム双生児』未読罪で私は死んだ。
文藝春秋『Iの悲劇』米澤穂信
鳥も通わぬ田舎にIターン者をつのって定住させるところから日々の困りごとのサポートまでをこなす地方公務員が語り手。
地方公務員がどんなに気を配っても人が出て行ってしまうという悲劇。
やるきなしの課長と常識に欠けた新卒とを仲間に頑張れ地方公務員。
新潮社『白銀の墟 玄の月 第一巻~第四巻』小野不由美
断片的な感想しか言えない……このシーンがよかったとかあのシーンがよかったとか。
そうじゃなくてもっと包括的な感想を言えるようになるまで熟成させたい。
KADOKAWA『まほり』高田大介
学究ロマン民俗学ホラー青春風味。
正直装丁があまり好きではなかったのだが、読んでからはこれしかないと悟った。
『図書館の魔女 霆ける塔』は2019年刊行だと聞いていたんですが。
小学館『プロペラオペラ』犬村小六
空飛んでなんぼ。
早川書房『嘘と正典』小川哲
「魔術師」は2019年ベストオブ短編!
さっき「ひかりより速く、ゆるやかに」がベストオブ短編だと書いたがベストはいくつあってもいいものだからいいのだ。
読後感が異常。私はいったい何を読まされたのか。わからない。
2.国内ノンフィクション・エッセイ
サイゾー『ルポ川崎』磯部涼
私事だが5年住んだ川崎から引っ越して平和な住宅街に居を構えることになった。
不良少年たちの成り上がりルートは反社になるかちんぴらになるかラップバトルに勝利するかの3択だということがよくわかる。
確かに夜の公園で先輩たちとフリースタイルバトルを繰り広げている様子を見たことが何度もあるので、できればみなさんそっち方面で頑張ってほしいですね。履修変更は簡単にできるみたいですけど。
集英社『のっけから失礼します』三浦しをん
のっけから下半身の話ではじまるエッセイ。ファッション誌の連載なのに大丈夫なの? 連載当時は表紙めくってすぐ読めるようになっていたのがタイトルの由来だという。本当に大丈夫なの?
彼女のエッセイ文体が大好きでずっと読んでいる。中盤から終盤にかけてHiGH &
LOW~EXILE方面にどはまりしてちょっとおかしくなってるところがよい。
新潮社『ノモレ』国分拓
『のっけから失礼します』で紹介されていたので読んだ本。
非文明圏の部族が文明圏に現れるので保護とコミュニケーションを試みる先住民の血を引く男の話。
じつはその男の家には100年前、奴隷制度から逃げるためにジャングルで生き別れた仲間(ノモレ)がいる……という伝説が伝わっているのだ。いま接触している部族はノモレなのか。
そんいい加減な話、ほんとかよ~、と思うのだが言葉が通じるなどの状況証拠が彼らはノモレなのではないかと思わせる力があるのであった……。
3.翻訳小説
早川書房『拳銃使いの娘』ジョーダン・ハーパー
なんの力もない少女がちんぴらの父親と逃げていく過程でどんどん強い少女になっていく過程がほんとうにすごいし楽しい。
銃はうつべし。
東京創元社『ローズ・アンダーファイア』エリザベス・ウェイン
ナチス政権下のドイツ、飛行機の輸送を生業にしていた女性の収容所での過酷な日々の話。
すぐさま前作も買いに行くことを誓って確かに買ったがまだ読んでない。
文藝春秋『監禁面接』ピエール・ルメートル
リストラ中年男が自分を採用しなかった企業の重役たちを監禁し、逆面接(というか尋問)を行う。
実は『その女アレックス』があんまりぴんと来なかったのだが、監禁面接はテンションの上がる読書ができたように思う。
国書刊行会『さらば、シェヘラザード』ドナルド・E・ウェストレイク
人生初ウェストレイク。が、この珍作でよかったのだろうか。
ポルノ小説(メタフィクション)だと思って読み終わって、「うわーおもしろかったです!」と友人に伝えたところ「実は仕掛けがあって……」とミステリ的な仕掛けを教えてもらってから大好きになった。
文藝春秋『鉤』ドナルド・E・ウェストレイク
最高。鉤の中でも一番好きな鉤。
東京創元社『ロイスと歌うパン種』ロビン・スローン
東京創元社がホームベーカリーでパンを焼いてツイッターでバズったきっかけになった本。
疲労しきったIT技術者の女性がひょんなことからパン種を譲り受け、あまりのおいしさにファーマーズマーケットに出店したりロボ腕でパンをこねたりするが後半からの急転直下が面白い。
私もホームベーカリーほしいです。パナソニックの。
岩波書店『どこまでも亀』ジョン・グリーン
強迫性神経症の主人公はいつも細菌性感染症の不安を抱えており、指をかじって瀉血したり、かと思えば傷口から細菌が侵入するのを恐れて絆創膏を貼って常に何かにさいなまれるような日々を送っている。
しかし幼馴染と再会を果たし、ちょっとした冒険譚から彼女は少しだけ変わる。
友人たちとの会話でみんなが笑っているとき、私だけは「みんなが笑っているから」笑っているのだ、というような一文が琴線に触れた。
東京創元社『ケイトが恐れるすべて』ピーター・スワンソン
ケイトはある経緯から精神を病み己の幸福を恥じていたが、日常を取り戻してきたある日いとこと住居を交換することにする。
隣室で殺人事件が起きたことを知り、ケイトはただでさえ日々をおびえながら暮らしているのに、さらなる恐怖にかられることになる。
いとこは隣人と関係がなかったと発言するが、周囲からは次々に関係性を物語る物証や証言が発掘され、ケイトはいとこを疑いだす。
『そしてミランダを殺す』が面白かったのだが本作もすごくおもしろかった。
東京創元社『メインテーマは殺人』アンソニー・ホロヴィッツ
ホロヴィッツ最高では?
4.翻訳ノンフィクション
亜紀書房『人喰い』カール・ホフマン
誰もが知る大財閥ロックフェラーの御曹司が消息を絶った。
首狩り族の住むという、アマゾンの奥地で。
彼は首狩り族に殺されてしまったのだろうか? なぜ?
化学同人『大英自然史博物館 珍鳥標本盗難事件―なぜ美しい羽は狙われたのか』
カーク・ウォレス・ジョンソン
今回選んだノンフィクションのなかでは唯一人が死なない一冊だが、倫理観がもっとも欠落しているのはこの書籍で扱われている事件だ。
大銀行家のロスチャイルド家の御曹司が設立した博物館から鳥の標本が299羽も盗まれた。
序盤は犯人の成育歴が語られる。犯人は毛針の愛好家で、わずか20歳の王立学院に通うフルート奏者。毛針に使うため、毛針コミュニティで転売するため盗難したのだという。
中盤で犯人は裁かれ、アスペルガー障害との診断が大いに影響した結果執行猶予付きの有罪判決を受けることになる。
著者は憤り、いまだ博物館へと返還されない鳥の剥製を探して毛針コミュニティに潜入するが、彼らの倫理観はめちゃくちゃ低かった!
早川書房『花殺し月の殺人――インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』デイヴィッド・グラン
アメリカの先住民のなかでもっとも裕福だとされたオセージ族とその関係者たちが次々に殺されていく。
石油と差別が複雑に絡み合い、事件は複雑な様相を呈してくるが……
FBI誕生のきっかけとなった事件を取り扱った事件ルポ。
亜紀書房『黄金州の殺人鬼――凶悪犯を追いつめた執念の捜査録』ミシェル・マクナマラ
カリフォルニア州A地域の連続強姦犯とB地域の連続強盗犯とC地域の連続殺人犯が同一人物であるという驚異のDNA検査結果が報道されたのはつい最近だった。
幼いころ近所のお姉さんが殺されたことが心残りだった著者はみずから犯人を「黄金州の殺人鬼」と名付け、ブログで犯人を追及していく。
被害者のひとりひとりの詳細が語られるのを被害者の家族写真と一緒に読むと胸が大変痛む……。
著者は犯人の逮捕を見ずに急死してしまったが、著者の夫がライターを2名やといさらに捜査を継続していく。
犯人を追い詰める系事件ルポといえば清水潔の『桶川ストーカー殺人事件』と『殺人犯はそこにいる』がある。
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